山影は一関市における「一関企業DX推進事業」を、まったくのゼロベースからスタートさせた。この事業は一関市内の企業の“DX化”。すなわち業務をアナログからデジタルへと移行し、省力化・効率化を図り、業態転換による企業の持続可能性を高めること、DX企業を創出することを目的としたものだ。DX化にはITスキルが必須だが、人材は地域おこし協力隊から募ることになっていた。ちなみに山影自身は文系出身で、もともとITは不案内だ。「この事業では『“地域が抱えるDX化”のニーズを掘り起こす』『IT人材を集める』『ニーズを整理し人材とマッチングする』という3つの大仕事があった上、私自身も最低限のITリテラシーを身に着ける必要がありました。例えば応募者との面談で“バックエンドでPythonを使って…”とか言われても、私が理解できないのでは話にならない。まずはそこからのスタートだったんです」。
ニーズの掘り起こしは山影自身が1年かけて行った。市内約50件の企業を一軒ずつ訪ね歩いては事業内容を説明し、ひたすら“DX化で解決できる困りごと”を聞き出す日々。そもそも企業側も困りごとの原因をはっきりとは把握していないため、「どこをどうDX化するのか」を整理しつつ何度もヒアリングを重ねた。IT人材の募集には、最終的に5名の地域おこし協力隊が集まった。が、正直言えばあと5人ほど増員したいのが本音だ。「とはいえIT人材は今、どこも欲しがっているので争奪戦です。今後は“自分のやりたい仕事が体現できる”とか“自然に癒されながら働く”など、プラスαを訴求する必要があるでしょうね」。公民連携事業として大きな成果が期待される本案件だが「道はまだ半ば」と山影。今後のさらなる飛躍に期待を寄せている様子だ。