一方阿部は、2021年に「MOYANE」プロジェクトを担当した。このプロジェクトは、新型コロナウィルスの影響で観光客が減少するなど打撃を受けていた盛岡市の老舗の和菓子やコーヒーショップなど6事業者とともに、新しいお土産ブランド「MOYANE」としてパッケージをリブランディングするというもの。地元の人々や旅行客などに盛岡の魅力を再発見してもらうことを目的とし、営業店や岩手アートディレクターズクラブとも連携して取り組んだ大規模な施策だ。ちなみに、「MOYANE」は「盛岡やっぱりいいよね」の略称。ネーミングは若手デザイナーのアイデアによるものだという。
「MOYANE」プロジェクトでは、1事業者に1名、20代の若手デザイナーが専属で付いてリブランディングを行った。打ち合わせを重ねるごとに若手デザイナーと老舗事業者の信頼関係は深まり、事業者からは「フレッシュな感性で今まで考え付かなかったデザインになって嬉しい」という声が寄せられ、若手デザイナーにとっても良い経験につながった。2021年11月に発売した「MOYANE」は、3ヶ月で6商品合計約4,800個を売り上げ、現在も盛岡市内4店舗で好評発売中。半年に1回ペースの製造だった商品が、リブランディング後は2ヶ月に1回ペースになったという事例もあるほど、プロジェクトは事業者の売上に貢献した。