M&Aは、よく「結婚」に例えられることが多い。譲渡する側、譲り受ける側、どちらも同じ熱量で、手を携えて未来へ進む覚悟が必要であるからこそ、「運命の相手」と出会うのはそう簡単なことではない。「IRC」M&Aチームの総力を挙げて、所有する数多くの買収ニーズ情報の中からA社のM&A候補としてマッチしそうな企業をリストアップし、アプローチした。その中で、A社の買収に興味を示す企業が現れる。それは意外にも、岩手県内を中心にアミューズメント施設経営や飲食事業、ドローン事業、メガソーラー事業等を展開しているB社だった。
B社は以前から事業の多角化を進める中でM&Aを検討していた。そんな折、「IRC」から紹介されたA社には、B社にはない長い歴史と老舗のブランド力があった。さらに、消費者ニーズに応えることによって今後の伸び代も十分にあると考え、M&A候補に名乗りを上げたのである。「最初にA社に提案した際には、別業種のB社と組む相乗効果がなかなか思い浮かんでいないようでした」。しかし佐々木には、この「出会い」が両者にとって良いものになるという確信があった。「B社の遊技場経営は、言い換えれば究極のサービス業です。ユーザーのニーズに応えるノウハウを持つB社と手を携えることで、A社も得られるものが大きいと思いました」。何度も対面の機会を設け、経営に対する考え方や、今後の方針を話し合いながら、議論は一歩ずつ前に進んでいった。